大人は「なぜ働くのか?」について
大人は「なぜ働くのか?」について書きたいと思います。
「大人はなぜ働くの?」。
子どもにそう聞かれたことはないですか?
お子さんがまだ小さかったりまだいなくても、いつかは聞かれる質問かもしれません。
その時あなたは何と答えるでしょうか?
「生きるためだよ。だって働いてお金を稼がないと食べていけないでしょ」。
あなたの答えに子どもはある程度納得するだろうが、どんな表情を浮かべるだろうか?
「大人っていいなあ、早く大人になりたいなあ」と目を輝かせているだろうか?
「がんばって働いていっぱい稼げば、欲しいものが何でも買えるんだよ。素敵だと思わないか」。
ろくに食べ物さえなかった戦後の時代ならさておき、DSもPSPも携帯もほしいものは買ってもらえる時代に、子どもたちは大きな夢を描くだろうか。
単的に言うと「生活をするため」には、さまざまなモノやサービスが必要だ。
今朝起きてから、使ったものすべてを思い出してみてほしい。
人間はこれらのすべてを一人では用意できません。
そこで会社を作り、それぞれが役割を分担して、モノやサービスを一生懸命生みだしているのです。
これが働くということです。
働くことでモノやサービスを生み出し、対価としてお金を得て、他の人が生み出してくれたモノやサービスを買うことで、必要なものをそろえて暮らしているのです。
つまり、働くことは社会の一員である大人にとって、権利ではなく義務なのだ。
生活に困らないだけのお金があるという人も、親と同居していて何とかなるという人も例外ではない。
「長年お疲れ様、そろそろゆっくりしてください」と言われるまでは、大人は社会人として働く義務がある。
義務と生活のために真面目に働いている人は、すでに立派な一人の大人であり社会人であると思うが、それだけでは人生がもったいないと考えてしまう。
義務として働かなければいけない時間は、人生のどのくらいに当たるか計算してみたことがあるだろうか。
寝ている時間を除けば、大人人生の約半分だ。通勤時間や仕事のことを思い出す夜や週末も含めればそれ以上かもしれない。
“義務だから働く、生活のために働く”だけでは、一度きりしかない人生がもったいなさすぎないか?思うのである。
ヒントを与えてくれるのが、徳島県上勝(かみかつ)町の「葉っぱビジネス」の話だ。
町の人口はわずか2000人で、2人に1人は65歳以上という、近い将来の日本の縮図のような高齢者の町。
「葉っぱ」とは、懐石料理を華やかに彩る“つまもの”のことだ。
ただの葉っぱを育てて売ることで、年収1000万円を稼いで家を新築したお婆ちゃんばかりが注目されているが、私は暇を持て余していた老人たちが仕事を得て、生き生きと暮らしている姿に注目している。
町はかつて林業、みかん農園と次々と地場産業を失い、働き手である息子たちは出稼ぎのために町を去っていった。
老いた年寄りにできる仕事はない。自らも働いて家族の収入を少しでも支えたいが、細々となら自分たちで暮らせないことはない。
すでに働く義務は果たしている。老人たちは必ずしも働く必要はなかった。
彼らは働くことで何を手に入れたのか。
お金も手に入れた。人によっては子どものために家を新築した人までいるという。それが羨ましくて葉っぱビジネスに参加した人もいた。
しかし彼らが手にしたものは、お金以上に「生きがい」ではなかっただろうか。
生きがいは毎日に笑顔を生み、彼らを健康にした。
その若者(当時)、横石知二さん(葉っぱビジネスの会社、株式会社いろどり社長)がかつて町の方々で目にした、愚痴や他人の悪口ばかりを言う老人たちの姿は見かけなくなった。
彼らは働くことで、働かないで余生を過ごすよりも、何倍も有意義な時間を過ごすことになったのである。
町には活気が溢れ、子どもや孫たちまでもが手伝いに帰ってきてくれるようになった。
年金生活者だったお年寄りたちが、自ら稼いで税金を納めている。
元気な人が増えて介護保険の適用が減っているそうだ。
大切なのは、ただ葉っぱを集めて売るだけの仕事と考えるかどうかだ。
老人たちは当初、「葉っぱを売るなんて、地元を馬鹿にしているのか」「葉っぱが売れたら苦労はしない」と、社長の横石さんを非難したという。
「こんな仕事」と思って切り捨てるか。やってみなければわからないと考えてまずはやってみて、工夫してみるか。そうしてお客様の求めるものを探り、よりいいものをめざしていくと喜ばれて商品は売れ、見合った対価までいただくことができるものだ。
食で四季を味わう懐石料理は、日本人の心を豊かにしてくれる。
葉っぱを売るだけの仕事の価値は、俯瞰(ふかん)してみれば決して小さくない。
健康で自然と調和した日本食は海外でも注目を集めている。元気に笑うお年寄りたちが採った葉っぱが、世界の人々を感動させる日も遠くないだろう。
「こんな仕事」が日本中の人、世界中の人を幸せにし、自分自身の生きがいになることを、葉っぱの町の先輩たちが教えてくれているように思う。
十分な蓄えがある人を除けば、働くことで対価を得なければ暮らしていけません。
ところが、すでに十分な蓄えがあるのに働き続ける人がいます。
また定年を迎えて仕事を離れた途端に、元気を失くす人がいます。
遊びは飽きるけれど、働くことは飽きないという人もいます。
だから商い(あきない)と・・・。(笑)
人は社会に出て働くこと、社会に参加することで自分の存在意義を認識し、喜びを感じられる動物でもある。
働いている大人たちをよく観察してみてください。どんな顔をして働いているでしょうか。
楽しそうに働いている人、無表情で働いている人、苦しそうに働いている人、様々です。
一度きりの人生、あなたはどんな顔をして働きたいですか?
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